「歯周病があるけれど、インプラント治療はできるのだろうか」このような不安を抱えている方は少なくありません。歯を失った部分にしっかりと噛める歯を取り戻したいという希望がある一方で、歯周病という診断を受けたことで治療を諦めかけている方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、歯周病がある状態のままではインプラント治療を開始することはできません。しかし、歯周病をしっかりと治療して完全にコントロールした状態にすれば、インプラント治療を受けることは可能です。ただし、歯周病の既往がある方は、治療後に「インプラント周囲炎」という歯周病に似た病気になるリスクが非常に高いため、より慎重な管理が必要になります。
この記事では、中野区の歯医者、ルミライズ歯科東中野が、インプラント治療と歯周病の関係について、治療前に知っておいていただきたい5つのポイントを詳しく解説します。治療の条件、リスク、期間、費用まで、患者さんが正しい知識を持って治療に臨めるよう、わかりやすくご説明いたします。
1. 【ポイント①】歯周病を完全にコントロールしなければインプラント治療は開始できません
1.1. なぜ歯周病があるとインプラント治療ができないのか
歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが細菌によって破壊される病気です。お口の中に歯周病菌が多く存在する状態でインプラント手術を行うと、インプラントが細菌に感染してしまい、治療が失敗するリスクが極めて高くなります。
インプラントは顎の骨に人工の歯根を埋め込む治療法ですが、手術の際には歯ぐきを切開し、骨に穴を開けます。この時、お口の中に歯周病菌が存在していると、傷口から細菌が侵入して感染を引き起こす可能性があるのです。
また、歯周病によって骨が溶けている状態では、インプラントを支えるための十分な骨の量がありません。骨の状態が悪いままインプラントを埋め込んでも、しっかりと固定されず、すぐにぐらついたり抜け落ちたりしてしまいます。
そのため、ほとんどの歯科医院では、歯周病がある状態ではインプラント治療を開始せず、まず歯周病治療を優先して行います。

1.2. 歯周病を完全にコントロールするとはどういう状態か
歯周病のコントロールとは、単に症状が落ち着いているだけではなく、以下のような状態を指します。
- 歯ぐきからの出血がない
- 歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)の深さが3mm以下に改善している
- お口の中の歯周病菌が大幅に減少している
- 歯ぐきの腫れや炎症が完全に治まっている
- レントゲンで骨の状態が安定していることが確認できる
これらすべての条件を満たし、担当の歯科医師が「インプラント治療を開始できる状態」と判断して初めて、次のステップに進むことができます。この判断は慎重に行われ、場合によっては数ヶ月間の経過観察が必要になることもあります。

1.3. 歯周病治療後にインプラント治療が可能になる理由
歯周病をしっかりと治療してコントロールした状態にすれば、インプラント治療の成功率は大きく向上します。お口の中から歯周病菌が減少することで、インプラント手術時の感染リスクが下がり、治癒も順調に進みやすくなります。
ルミライズ歯科東中野でも、歯周病治療に時間をかけてしっかりとお口の環境を整えてからインプラント治療を行った患者さんが、良好な結果を得ているケースが数多くあります。
大切なのは、焦らずに段階を踏んで治療を進めることです。歯周病治療に数ヶ月かかったとしても、それは将来的にインプラントを長く使い続けるための重要な準備期間なのです。

2. 【ポイント②】歯周病の既往がある方はインプラント周囲炎のリスクが非常に高い
2.1. インプラント周囲炎とは何か
インプラント周囲炎は、インプラントの周りに細菌が繁殖して炎症が起こる病気で、歯周病とほぼ同じメカニズムで発症します。インプラントと歯ぐきの境目から細菌が侵入し、出血や炎症が広がって、骨を溶かしていきます。
症状も歯周病と似ており、以下のようなサインが現れます。
- 歯ぐきからの出血
- 歯ぐきの腫れや赤み
- 膿が出る
- インプラントがぐらつく
- 噛むと痛みや違和感がある
しかし、インプラント周囲炎には歯周病よりも深刻な特徴があります。インプラントには天然の歯のような防御機能がないため、一度感染すると進行速度が非常に速く、歯周病の約3倍の速さで骨が溶けていくというデータがあります。

2.2. 歯周病の既往がある方のリスクの高さ
過去に歯周病になったことがある方、または現在歯周病を治療中の方は、インプラント周囲炎を発症するリスクが非常に高いことが研究で明らかになっています。
その理由は以下の通りです。
| リスク要因 | 詳細 |
|---|---|
| 歯周病菌の残存 | お口の中に歯周病菌が残っている可能性が高く、インプラントに感染しやすい |
| 免疫機能の低下 | 細菌に対する体の防御反応が弱くなっている |
| 骨質の問題 | 歯周病で一度破壊された骨は、質が変化していることがある |
| セルフケアの課題 | 過去に歯周病になった背景に、ケアの習慣に課題がある場合がある |
特に注意が必要なのは、歯周病が完全に治ったように見えても、お口の中には目に見えない形で歯周病菌が残っている可能性があるということです。この菌がインプラント周囲に定着すると、インプラント周囲炎を引き起こす原因となります。

2.3. インプラント周囲炎の治療の難しさ
インプラント周囲炎は、歯周病よりも治療が困難です。天然の歯には歯根膜という組織があり、これが細菌の侵入を防いだり、治癒を促進したりする役割を果たしていますが、インプラントにはこの歯根膜がないため、感染すると治療が非常に難しくなります。
軽度のうちに発見できれば、専門的なクリーニングや薬物療法で改善することもありますが、進行してしまった場合は、外科的な処置が必要になったり、最悪の場合はインプラントを撤去しなければならなくなることもあります。
そのため、歯周病の既往がある方がインプラント治療を受ける場合は、治療後のリスクを十分に理解した上で、より徹底したメンテナンスを続けることが必要です。

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3. 【ポイント③】インプラント治療を受けるための厳しい条件
3.1. 歯周病が完全に安定していること
前述の通り、インプラント治療を開始する最も重要な条件は、歯周病が完全にコントロールされて安定している状態であることです。
具体的には、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 歯周基本治療(歯石除去、ブラッシング指導など)が完了している
- 必要に応じて歯周外科治療も完了している
- 歯周ポケットの深さが改善している
- 歯ぐきからの出血がない、または最小限である
- 3ヶ月以上の経過観察で状態が安定している
この状態を維持できていることが確認されて初めて、インプラント治療の計画を立てることができます。

3.2. 十分な骨の量と質が確保できること
歯周病によって骨が溶けている場合、インプラントを支えるのに十分な骨の量と質がないことがあります。
骨の状態は、レントゲン撮影やCT検査で詳しく調べることができます。もし骨の量が不足している場合は、以下のような骨造成という処置が必要になる場合があります。
- GBR(骨誘導再生法):人工の骨材料や自分の骨を使って、骨の量を増やす治療
- サイナスリフト:上顎の奥歯部分の骨が少ない場合に行う骨造成の方法
- ソケットリフト:サイナスリフトよりも小規模な骨造成の方法
ただし、骨造成を行う場合は治療期間がさらに長くなり、費用も追加でかかります。また、歯周病で一度破壊された骨は質が変化していることもあり、骨造成の成功率も通常よりやや低くなる可能性があります。

3.3. 治療後の徹底したメンテナンスに通えること
歯周病の既往がある方の場合、通常の方よりも頻繁なメンテナンスが絶対に必要です。
メンテナンスでは以下のようなことを行います。
- インプラント周囲の清掃状態のチェック
- 歯周ポケットの深さの測定
- 出血や炎症の有無の確認
- 噛み合わせの確認と調整
- レントゲン撮影による骨の状態の確認
- 専門的なクリーニング
歯周病の既往がある方は、通常は3ヶ月に1回、場合によっては1〜2ヶ月に1回の頻度でメンテナンスを受ける必要があります。このメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎を発症するリスクが急激に高まります。
長期間にわたって定期的に通院できること、そしてメンテナンス費用も継続的に負担できることが、治療を受けるための重要な条件となります。

4. 【ポイント④】歯周病治療からインプラントまでの長い道のり
4.1. 精密検査で現状を正確に把握する
治療の第一歩は、現在のお口の状態を正確に把握することです。
ルミライズ歯科東中野では、患者さんのお口の状態にあわせて、以下のような検査を行います。
- 歯周ポケットの深さの測定
- 歯ぐきからの出血の有無の確認
- 歯の動揺度(ぐらつき)のチェック
- パノラマレントゲン撮影による骨の状態の確認
- 必要に応じてCT撮影による三次元的な骨の評価
- 噛み合わせのチェック
- 必要に応じてお口の中の細菌検査
これらの検査結果をもとに、歯周病の進行度、骨の状態、全身の健康状態などを総合的に判断して、治療計画を立てます。この段階で、歯周病治療にどのくらいの期間が必要か、インプラント治療が可能かどうか、骨造成が必要かどうかなどを見極めます。

4.2. 歯周病治療で土台をしっかり整える
検査の結果、歯周病の治療が必要と判断された場合は、まず歯周病治療から開始します。この段階を省略してインプラント治療を行うことは絶対にできません。
歯周病治療の流れは以下の通りです。
- 歯石除去とクリーニング:歯の表面や歯周ポケット内の歯石や細菌を徹底的に除去します
- ブラッシング指導:ご自宅でのケア方法を丁寧にお伝えし、正しい磨き方を身につけていただきます
- 歯周ポケット内の清掃:専門的な器具を使って、深い部分までしっかり清掃します
- 再評価(1回目):治療開始から1〜3ヶ月後に状態を確認し、改善度を評価します
- 必要に応じて歯周外科:ポケットが深く残っている場合は、外科的な処置を行うこともあります
- 再評価(2回目):さらに1〜3ヶ月後に再度評価し、安定した状態かを確認します
- 経過観察期間:安定した状態が続いているかを観察、維持するためのメンテナンスを行います
この段階では焦らずにしっかりと歯周病をコントロールすることが最優先です。治療期間は歯周病の進行度によって異なりますが、軽度でも3〜4ヶ月、中等度以上の場合は6ヶ月〜1年程度かかることもあります。

4.3. インプラント手術と定着までの期間
歯周病が完全に安定した状態になり、担当医が許可を出して初めて、インプラント手術を行います。
手術は以下のような流れで進みます。
- 最終確認:手術直前に再度、歯周病の状態と骨の状態を確認します
- 麻酔:局所麻酔を行いますので、手術中の痛みはほとんど感じません
- インプラント体の埋入:顎の骨に穴を開けて、チタン製のインプラント体を埋め込みます
- 縫合:歯ぐきを縫い合わせて、インプラントが骨と結合するのを待ちます
手術後は、インプラントが骨にしっかりと結合する期間が必要です。これを「オッセオインテグレーション」といい、通常は3〜6ヶ月程度かかります。
歯周病の既往がある方の場合は、通常よりも慎重に経過を観察し、骨との結合が十分に確認できてから次のステップに進みます。
骨との結合が確認できたら、アバットメントを装着、型取りをします。院内ラボで歯科技工士が作製した人工の歯を取り付けて治療は完了です。その後はメンテナンスで状態をしっかりと管理していきます。

4.4. 治療後の徹底したメンテナンスが生命線
インプラント治療が完了した後も、定期的なメンテナンスを継続することが絶対に必要です。特に歯周病の既往がある方にとって、メンテナンスは治療の一部と考えてください。
メンテナンスの頻度は患者さんのリスクによって異なりますが、歯周病の既往がある方は最低でも3ヶ月に1回、場合によっては1〜2ヶ月に1回が推奨されます。歯科医師や歯科医師からお伝えしている、患者さんごとの適切な通院頻度を守ってお越しください。メンテナンスを続けることで、インプラント周囲炎の兆候を早期に発見し、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
メンテナンスを怠った場合、せっかく時間と費用をかけて入れたインプラントが数年で使えなくなってしまう可能性があります。長く使い続けるためには、生涯にわたるメンテナンスが不可欠です。

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5. 【ポイント⑤】治療にかかる期間と費用の現実
5.1. 治療全体にかかる期間の目安
歯周病治療からインプラント治療完了までの期間は、お口の状態によって大きく異なります。
一般的な目安は以下の通りです。
| 治療段階 | 期間の目安 |
|---|---|
| 歯周病治療(軽度) | 3〜4ヶ月 |
| 歯周病治療(中等度) | 6ヶ月〜1年 |
| 経過観察期間 | 3〜6ヶ月 |
| 骨造成(必要な場合) | 4〜6ヶ月 |
| インプラント手術〜骨結合 | 3〜6ヶ月 |
| 人工歯の製作と装着 | 2〜3週間 |
| 合計 | 約1年〜場合によっては2年以上 |
歯周病がある場合、インプラント治療完了までに1年以上、場合によっては2年近くかかることも珍しくありません。これは非常に長い期間に感じられるかもしれませんが、一つ一つの段階をしっかりと進めることが、将来的にインプラントを長く使い続けるための確実な道なのです。

5.2. 歯周病治療とインプラント治療の費用
治療費用は、お口の状態や必要な処置によって異なります。
一般的な費用の目安をご紹介します。費用は医院によってことなるため、治療前に確認することがおすすめです。
歯周病治療の費用目安
- 基本的な歯周病治療(保険適用):数千円〜数万円
- 歯周外科(保険適用の場合):1〜3万円程度
- 重度の場合の総額:5〜20万円程度
インプラント治療の費用目安(自由診療)
- インプラント1本あたり:50万円〜80万円程度
- 骨造成が必要な場合:追加で5万円〜15万円程度
- CT撮影などの検査費用:1万円〜3万円程度
メンテナンス費用目安(継続的に必要)
- 1回あたり:3千円〜1万円程度
- 年間(3ヶ月に1回の場合):1万2千円〜4万円程度
歯周病の基本的な治療は保険適用となりますが、インプラント治療は基本的に自由診療となります。治療開始前に詳細な見積もりをお渡ししますので、総額をしっかりと確認してから治療を開始すると安心です。

5.3. 医療費控除や分割払いの活用方法
治療を目的とした(見た目の改善だけではない)インプラント治療は、医療費控除の対象となります。1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで税金の還付を受けられます。歯周病治療の費用も含めて計算できますので、領収書は必ず保管しておきましょう。
また、ルミライズ歯科東中野では、デンタルローンやクレジットカードでの分割払いにも対応しています。まとまった費用を一度に用意するのが難しい場合でも、無理のない支払い計画を立てることができますので、お気軽にご相談ください。
ただし、治療期間が長期にわたること、そして治療後も継続的にメンテナンス費用がかかることを考慮して、資金計画を立てることが重要です。

6. まとめ:歯周病がある方こそ慎重な判断と覚悟が必要です
歯周病がある、または過去にあった方がインプラント治療を検討する際に知っておくべき重要なポイントを改めて整理します。
治療前に知っておくべき5つのポイント
- 歯周病を完全にコントロールしなければ治療開始不可(歯周病がある状態では絶対に開始できない)
- 歯周病の既往がある方はインプラント周囲炎のリスクが非常に高い(通常の方の数倍のリスク)
- 治療を受けるための条件は厳しい(歯周病の安定、十分な骨、徹底したメンテナンスへの通院)
- 治療完了までの道のりは長い(歯周病治療から1年〜2年以上かかることも)
- 費用と時間の現実を理解する(治療費に加えて生涯のメンテナンス費用も必要)
歯周病の既往がある方にとって、インプラント治療は決して楽な選択ではないかもしれません。しかし、歯周病をしっかりとコントロールし、治療後も徹底したメンテナンスを続けることができれば、失った歯の機能を取り戻し、快適な食生活や自信のある笑顔を実現することは可能です。
ルミライズ歯科東中野では、歯周病治療からインプラント治療、そしてその後の長期的なメンテナンスまで、一貫したサポート体制を整えています。あなたのお口の状態に合わせた最適な治療計画をご提案いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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