40代女性の患者さんから、「下の前歯の隙間が気になる、上下の前歯が咬まないのが気になる」とご相談いただいた症例です。
すきっ歯は見た目の悩みと思われがちですが、本症例では前歯どうしが触れない「開咬(かいこう)」を伴っていました。前歯が働かない分、噛む力の多くを奥歯が受け止めていた状態です。
ここでは、隙間を閉じることで前歯の噛み合わせをつくった治療計画と、途中で動きが遅れた1本の歯への対応を中心に、13ヶ月の治療をご紹介します。
「下の前歯の隙間が気になる、上下の前歯が咬まないのが気になる」
鏡を見るたびに目に入る下の前歯の隙間と、口を閉じても上下の前歯が合わないこと。この2つが、来院のきっかけでした。
どちらも見た目の悩みとして語られやすい症状ですが、前歯が咬まないことは食事のしやすさにも関わります。そこで、見た目と噛み合わせの両方を治療の目標に据えました。
検査では、下の前歯の間に複数の隙間が開いていました。奥歯をしっかり噛み合わせても、上下の前歯の間には空間が残ります。上の前歯には、軽い重なりもありました。
右下の奥歯2本には金属の詰め物が入っており、口を大きく開けると銀色が見える状態でした。
それぞれの言葉の意味を、簡単にご紹介します。
空隙歯列(くうげきしれつ)は、歯と歯の間に隙間がある歯並びで、いわゆる「すきっ歯」です。叢生(そうせい)は、歯が重なったりねじれたりして並んでいる状態をいいます。
開咬は、奥歯で噛んでいるのに前歯どうしが触れない噛み合わせです。食べ物を前歯で噛み切りにくいだけでなく、前歯が受け持つはずの力まで奥歯が負担することになります。
そのままにしておくと、次の3点が懸念されました。
いずれも、すぐに痛みが出るものではありません。時間をかけて少しずつ歯と歯茎に影響していくため、歯並びを整えることは、こうしたリスクを減らす予防の一つでもあります。
本症例のポイントは、下の前歯の隙間を閉じることが、そのまま噛み合わせの改善につながるという点でした。
下の歯列の隙間がなくなると、上下の前歯の重なり(被蓋)が深くなります。そこに奥歯をわずかに沈める動き(臼歯部の圧下)を組み合わせ、前歯どうしが触れ合う位置まで導いていく計画です。
前歯だけを並べ直すのではなく、奥歯の高さも含めて、噛み合わせ全体を組み立て直すイメージです。
装置は、歯の動かし方と、治療中のお手入れのしやすさから選びました。
開咬の改善に欠かせない奥歯の圧下は、マウスピース型矯正装置で取り入れやすい動きです。本症例の歯並びには、この特性がよく合っていました。
マウスピースは食事や歯みがきのときに外せるため、装置のまわりに汚れが残りにくくなります。もともと隙間や重なりで磨きにくさを抱えていた方には、大切な条件でした。
装置の向き不向きは、歯並びや生活のリズムによって変わります。本症例では、この2つの理由からマウスピース型矯正装置が合っていると判断しました。
精密検査で現在の歯並びと噛み合わせを記録し、どの歯をどう動かすかを計画しました。内容をお伝えし、ご納得いただいてから治療に入っています。
マウスピースは1週間ごとに新しいものへ交換します。月に1回ほどご来院いただき、歯の動きとマウスピースの合い具合を確かめました。
歯並びが整ってきた段階で、細部を仕上げるためのマウスピースを追加で製作しました。こちらも1週間ごとの交換です。
1本だけ動きが遅れた左上の前から2番目の歯に、マウスピースの加工とゴムかけを組み合わせて対応しました。歯を下方向へ引き出し(挺出)、周りの歯と高さをそろえています。
噛み合わせが落ち着いたところで、右下の奥歯2本の金属の詰め物をセラミックインレーに交換しました。左上の奥歯2本の虫歯治療も、この時期に行っています。
マウスピースによる矯正を終え、整った歯並びを保つためのリテーナー(保定装置)へ切り替えました。
1つめは、下の前歯の隙間です。治療前の正面写真で目立っていた歯と歯の間の空間は、治療後には閉じています。
2つめは、前歯の噛み合わせです。治療前は奥歯で噛んでも上下の前歯が離れていましたが、治療後は上の前歯が下の前歯に軽く重なる位置で咬み合っています。
3つめは、右下の奥歯です。金属の詰め物がセラミックに替わり、下顎の写真でも銀色が見えなくなりました。前歯が咬み合うようになったことで、噛む力を前歯と奥歯で分け合える状態に近づいています。
序盤は、患者さんがマウスピースを丁寧に使ってくださったおかげで、歯の動きは順調でした。
課題になったのは、左上の前から2番目の歯(側切歯)です。この歯はマウスピースの力が伝わりにくく、計画より動きが遅れることがあります。本症例でも、この1本だけが周りの歯についてきませんでした。
すでに整った歯並びを崩さないよう、マウスピースのその部分にだけ加工を加え、ゴムの力で1本だけを引き出しました。動きは短期間で追いつき、全体の仕上がりにそろっています。
右下の奥歯の金属の詰め物は、矯正前から口を開けると目立つ状態でした。
交換を矯正の後にしたのは、歯が動いて噛み合わせが変わってから作るほうが、新しい噛み合わせに合った形に仕上げられるためです。
治療期間中、患者さんの歯みがきは回を追うごとに上達し、お口の中も来院のたびにきれいになっていきました。担当医として、とても嬉しかった変化です。歯並びが整えば歯ブラシも届きやすくなり、これからの虫歯や歯周病の予防にも役立ちます。
矯正で動かした歯の周りの骨や歯茎は、新しい位置に慣れるまで時間がかかります。そのため矯正後は、リテーナーで歯並びを固定する期間を設けています。
本症例では、現在もリテーナーを継続してお使いいただいています。
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時期
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リテーナーの装着時間
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矯正終了〜6ヶ月
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1日中
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その後3〜4ヶ月
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1日15時間程度
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以降
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就寝時のみ
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経過観察は3ヶ月に1回です。歯並びに変化がないかを見るとともに、虫歯・歯周病のチェックやクリーニングもあわせて行っています。
リテーナーの使い方や期間は、歯の動いた量などによって一人ひとり異なります。
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項目
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内容
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|---|---|
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治療時期
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2025年10月 治療終了(治療期間 13ヶ月)
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患者さんの年代・性別
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40代・女性
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主訴
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下の前歯の隙間が気になる、上下の前歯が咬まないのが気になる
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診断名
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空隙歯列、叢生、開咬
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治療内容
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マウスピース型矯正装置(インビザライン)による矯正治療、左上2番のゴムかけによる挺出、右下第一・第二大臼歯のセラミックインレー、ワイヤー装置は不使用
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治療期間・通院回数
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13ヶ月・通院は月1回程度
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治療費(税込)
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¥1,144,000(矯正治療・セラミックインレーを含む総額)
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保険適用の有無
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自由診療(保険適用外)
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主なリスク・副作用
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後戻り/歯肉退縮(歯茎が下がること)/歯根吸収(歯の根が短くなること)/マウスピースの装着時間が不足した場合の治療計画の遅延/治療中の一時的な痛みや違和感/セラミックの欠け・破損
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※本ページで紹介している治療結果は、この患者さんの経過です。治療結果には個人差があり、すべての方に同様の経過をお約束するものではありません。 ※治療内容・期間・費用は、お口の状態によって一人ひとり異なります。詳しくは検査・診断のうえでご説明いたします。
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診療時間
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月
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火
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水
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木
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金
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土
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日
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9:30 ~ 13:30
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14:30 ~ 17:30
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